誇りと復讐(上下巻)

誇りと復讐〈上〉 (新潮文庫)

誇りと復讐〈上〉 (新潮文庫)

ジェフリー・アーチャーの小説が好きです。
読者歴は随分と長くなりました。…20年以上?

言葉遊びの妙に、イギリスの文化・風土にちなんだ洒落っ気、そして伏線やどんでん返しのストーリー展開はずっと変わらぬ彼の得意芸ですが、それらとは別に本作で特徴的に感じたのは、物語に登場する「老兵」のカッコよさ。

最後の法廷シーン、彼の初期作品であればきっと、若手弁護士のアレックスが狡猾な敵相手に必死で頭を捻り、過去のアドバイスから得た一瞬のひらめき(と、絶妙なタイミングで得た幸運)を味方に逆転勝利を収めるという、一種スタンダードな小気味よい展開が待っていたのではないかと思う。
けれど今作では、一度は引退したベテラン弁護士であるアレックスの父が、真打ち登場とばかりに最後の法廷で弁論を決めて主人公(と被告)を救う。
この結末には、御年70歳を超えた著者の「若者だけがヒーローじゃないさ」・・・まだまだ第一線で戦ってやる、という気概を感じた。

こんな風に創作物が、作者のライフステージやそれに伴う価値観を投影することもやはり自然なことなのかもしれない。