シェイプ・オブ・ウォーターと「人魚姫」

第90回アカデミー賞 作品賞受賞作。

なかなか世界観が独特というか、どう受け止めるか微妙な作品でもあったけど、とりあえず鑑賞しながら「人魚姫」(アンデルセン童話)との一致に注目してました。
オープニングから然りではありますが、随所に散りばめられたポイントがありました。以下青字で表示。

●人魚姫は、人間の王子様という【異種族の男性に恋をする】
 (人間と人外が逆ですが、物語のメインとなる出来事)
●人魚姫は、海の魔女に頼んで自分を人間に変えてもらう。その代償として人魚姫は【口がきけなくなる】
 (イライザの属性。彼女が元々「彼」と同じ種族だったという解釈もあるようですね)
●陸で暮らすようになった人魚姫、魔法で変化した身体に慣れず【絶えず足が痛む】
 (イライザの同僚の黒人女性が「靴が合わない」「足が痛い」を連発していたのはこのためかと)
●王子への恋の成就が絶望的かと思われた頃、人魚の姉妹が現れて【王子が死ねば人魚姫は元の生活に戻れる】と伝える。
 王子を殺せば魔法が解けて人魚の姿に戻ることができる、と。
●しかし人魚姫は【愛する王子を死なせることを拒む】
 (自ら手を下すことを放棄するのと、他者の攻撃から守るという差はありますが)
●元々の魔女との誓約として、人魚姫は【王子と結ばれなければ死んでしまう】【王子と結ばれれば、ずっと王子と同じ種族として共に暮らせる】
 (ラストシーンで両方の展開が体現されていたと思います)
●人魚姫は王子と結ばれず、彼を殺して人魚に戻る道も選ばず、自ら【海に身を投げ、海の泡となって消える】
 (本作の場合は海に消えることが想いの成就でありハッピーエンドでしたが)
監督が描きたかったものとして、この「異種恋愛譚」というテーマも大きかったようですね。
象徴的な作品といったらやはり人魚姫ですね。片思いだけど。

正直、観終わった後で「あー楽しかった」「感動したー」とはならなかったけど(なる人もいるんだと思う)、後から振り返ると確かに印象に残っていて、いろいろ「思わされる」作品ではありますね。
好き嫌いとはまた別で。アカデミー作品賞ってそういうのがやっぱり多いのかな。