ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命(ネタバレあり)
前回エントリに続きますが、こちらはネタバレ&ツッコミで。
本作、公式サイトの解説を読むと「やっぱりそういう話がしたかったのか」という感じなのですが、実際に映画だけ観てそこが汲み取れるかは、難しいような。
PRのイメージや、このあたりの煽り文句からすると、鑑賞前の印象としては、以前にニコール・キッドマンがグレース・ケリーを演じたこちらを彷彿とさせたのですが。
本作「ジャッキー」は歴史に残る衝撃的事件を扱いつつも、あまりメリハリを感じる構成ではないですね。
公式サイトより。
暗殺という悲劇的な最期を迎えたケネディ大統領の葬儀の映像が世界中に流された時、人々は初めて見るジャッキーの姿に驚いた。「ただケネディの隣にいる人」と思われていた彼女が、毅然としたストイックなまでのたたずまいで、二人の幼い子供たちを励ましながら、荘厳な国葬を取り仕切ったのだ。
…あ、あれはそういうシーンだったのか。(率直なリアクション)
そもそも作品全体で過去と現在が交錯していて時系列通りに進まないのも理由かもしれませんが、葬儀でのジャッキーにそこまで変貌は感じなかったかな。
そもそも黒いベールで顔が見えづらいし。
でもつまり、ホワイトハウスのTV取材の時に笑顔を振りまくファッションアイコンの彼女と、葬儀の場で先頭を切って歩く毅然とした未亡人の姿を対比させる意図があった、のか?
…わかりにくいんじゃないかな。
なんていうか、随所そうなんですよね。
たとえば件のTV取材については、本番前の彼女の不安げな姿と、白黒のTV画面の中で微笑む(微妙に緊張がにじむ)姿が映像として示された後で、数年後?のインタビュー(書籍向け)で記者とこんな会話をします。
「ホワイトハウスの改装に税金を使い過ぎだと言われたわ」
「でもあのTV放送は素晴らしかったですよ、あなたはキャスターにもなれそうだ」
「(キッ)どういう意味かしら。私に助言したつもり?」
「…いや、失礼。そんなつもりでは」
正直ちょっと掴みづらい会話と感じたのですが、後から閲覧したWikipedia曰く。
テレビで初めて公開された新しいホワイトハウスは評判を呼び政府のイメージアップと費用以上の効果をもたらした。この番組は史上初めてホワイトハウスの奥深くにテレビカメラが入り、案内役をつとめたジャクリーンの気品に視聴者が魅了された。
うん、あれだけだとわかんない。
やっぱりこのあたりは観客が知っている前提ということかしら。
そういう面でやっぱり日本人はハテナとなりやすい気がする。
そして、どうもファーストレディの「光と影」みたいなものを描くにしては、ジャッキーが終始内心ボロボロな感じで(映像的には美しいのですが)、コントラストを感じにくかったかも。
劇中での堂々とした幸せそうな姿って、暗殺直前とラストシーンくらいでしたよね。
中盤は「『突然夫を失って、子供を抱えて途方に暮れる未亡人の悲しみと再生の物語』の舞台をホワイトハウスにしてみた」という風にも見えてきた。
そして、その終盤のモチーフ、これも史実だから仕方ないんですけど、当時のホワイトハウスの栄華をたとえた「キャメロット王国」の伝説がまた日本人に馴染みがないんですよね…苦笑。
欧米だとたぶん、その名前だけでイメージが伝わるんだろうけど、そこも日本人には伝わりにくい部分かも。
そんなこんなで以下雑感。
●「暗殺された大統領で名を知られているのはリンカーンただ一人」というのを、ジャッキーが居合わせた運転手へのヒアリングで確認・証明するシーンは、なるほどという感じで面白かったです。
そして夫をリンカーンにしようとした。これは歴史的にも言われてる事なんですね。
(一方で「リンカーンとはそもそも実績が違う」という劇中のツッコミもあり)
●葬儀の場での幼い息子の敬礼をはじめ、むしろ史実通りに映像化するだけでドラマチックになりそうな現実のエピソードが取り上げられてないのはあえてなのか。
ご当地の感覚だと陳腐になるくらい、語りつくされた話だったたりするのかしら。
●ホワイトハウスの調度品が私物扱いになること、ホワイトハウスを去った後で家族が生活苦に陥ることもあるといった話は、この映画で知って興味深かったです。
劇中ではそんな話題でジャッキーの不安定な状態を強調して「子供たちの教育のために調度品を売らないと」なんて言ってたけど、実際はご実家めっちゃ金持ちですよね…。
しかもその後は外国の大富豪と再婚してアメリカを去ったなんて話は、この映画では語られない。
自らの知性と才覚、そして深い愛で“ケネディ大統領”を創り上げてきた“名プロデューサー”の姿が今、明かされる。
……だ、そうです。