原風景

私にとっての「海」は、
柔らかい白い砂浜の景色ではなく、

海藻のはびこる岩に、ひしめきあう貝の殻。
うち捨てられた漁の網やタコつぼ、そんな雑然とした風景。







障害物が多くて、転ばないように気をつけないと色々とまずい場所。
カキの殻なんて、うっかり踏んだら多分シャレにならない怪我をする。


見ようによってはグロテスクな、でも個人的には愛嬌たっぷりの、
小さな生き物たち。


魚市場で、大きなマグロが目の前で叩き殺されるのも見た。
(さすがにしばらく脳裏に焼きついた)


水揚げされた大量のタチウオを、童話に出てきたウミヘビだと
本気で思い込んだ。


デパートもコンビニも非日常の存在だった頃から、あらゆる面で
海は生活の中にあったし、それが珍しいということも知らなかった。


狭い世界の中、すぐ側にあった、これが原風景。