ナルニア国物語 第3章

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そろそろ日常に戻っていくとしましょう。

週末の都心の映画館は、とても混み合っていました。
みんな、家に閉じこもるのはそろそろ終わりにしてきています。電車も動くし。
とはいえ、遠出をしたり屋外でレジャーにいそしむには、まだ気分じゃなかったり
ガソリンが無かったりするんでしょうね。
ある程度安心できる建物の中で、受動的に楽しめる娯楽がたぶん丁度良いのだと
思います。

大丈夫なのだけど微妙に元通りではない、そんな状態です。



…で、さて。

結局、正式タイトルの「アスラン王と魔法の島」については、いまいちは印象に残らない
風情になっていたような。
ナルニア3」ってことで、まあ充分ですが。

そして、懸念していた翻訳も、字幕では「朝びらき丸」の名前も無事に守られていて何より。
いつかの予告記事で見て引きつった「ドーン・トレーダー号」は、単純に邦訳版の本を知らない
記者さんが書いたのかな。


以下感想。

■映像
ここまでシリーズを通して感じることですが、最初に広がるナルニアの景色の、映像の
美しさと原作への忠実さが素晴らしい。

大海原を堂々と進む、朝びらき丸の船体。
主人公のルーシーとエドマンドは、久しぶりに訪れたナルニアの姿に歓声を上げますが、
かつてこの物語に引き込まれた子供であった私もまた、およそ20年間心に抱いてきた
景色を目にすることができた喜びは大きかった。

1作目の「ライオンと魔女」の雪景色で憶えた感動に、再び出会うことができました。
今回は3Dだしね。



■脚本
まあ、原作はこんなに緊迫感のある話じゃないのですけども。
本シリーズの、これまでの改編については許容範囲内かと思っています。
(そもそも子供の頃に読んだきりだから、細部を覚えてないということもあり)


実際は主要キャラクターの平均年齢が低いし(おそらく原作ではカスピアンが15歳くらい。笑)
特に国の存亡などはかかっていないノリでの冒険が繰り広げられますが、そのまま映画化したら
間違いなく子供向けになってしまうであろうことは理解できる。


それで全体がチャチなものになってしまうのであれば、登場人物の年齢設定が多少ブレても
何やら多少話が怖くなってても(結果、他のシリーズと若干カブりそうでも)、あと心当たりの
ない恋愛要素が盛り込まれていても、ちゃんと手もお金もかけたものを作っていただけるほうが
ありがたい。
芯の部分はちゃんと守ってくれてると思うしね。


■名言
映画の本筋とは少し違う観点ですが、とても印象に残った言葉があったのでご紹介させて
いただきます。

物語の中盤で困った魔法にかかってしまい、悲嘆にくれるユースチスを励ます、我らがリーピ
チープの台詞です。
(うろ覚え、かつ意訳を含みますがご容赦を)


“並外れた出来事は、並外れた人にこそ起こるものだ。
 これは予兆なのかもしれないよ。
 この先の君に訪れる、予想もしないような素晴らしい運命のね”


文字通り、「並外れた」事態に襲われた今の日本のことや、身の周りに生じた色々なことが
思い出されて、この台詞から以後はやたらと泣き続けていた私です。
そこまで泣く映画でもないんですけど。


今の苦しい状況も、また「予兆」として信じることができるならば。



■その他
諸々雑感。(ネタバレには配慮しています)


・随所のシーンで「これはパイレーツオブカリビアンとは時期をずらす必要があった
 わけだな…」などと余計なことを考えましたが。
 一か所、リーピチープの船上アクションで「おまえはジャックスパロウか!」とツッコミ
 入れたくなったシーンがありましたが、あれはわざとだよね?


・のうなしあんよ、デカいよ(笑) もうちょっとコンパクトなイメージでいたんだけど、
 むしろ描写からすればあれで正しいのか?


・ユースチスの変化と、リーピチープとの関係性は、だいぶ単純化されていたように思うけど、
 限られた時間の中で伝えるべきことが伝わっていて良かったと思う。リープ、いい奴だなあ。


・一部「これはハリーポッターとも時期をずらす必要があったよな…」とも思いましたが
 (←うるさい)、ユースチスの活躍もだいぶ形は変えつつ、かなり見せ場はもらっていましたね。
 ああ、魔法が解けるタイミングが違うのか。 
 原作で彼が初めて剣を振るうシーンも良かったですけどね。


・今回のエドマンドが、私の中でのユースチスのビジュアルイメージにかなり近くて、
 ある意味で惜しい。最終章のユースチスが彼だったらドンピシャなんだけど。
 (あらゆる意味で無理です)


・特に原作既読者から見ると、終盤のアレとアレは、続編への実質「約束」と受け取っていいよね?
 いよいよ楽しみになってきました。頑張れ次代のヒーロー。


・「ルーシーよりもスーザンの方がはるかに美人」っていうのは、日本人の目からだと
 あんまりピンと来ないよね…どっちも割と普通というか。
 たまに感じる、民族による美的感覚の越えられない壁。


・最後に「わかる人にはわかる」ネタが出てきますが…本当だったら、あの時点で
 家に遊びに来るのは非常に不自然ですよね。でもサービスとしては嬉しい。


・エンドロールは、原作へのリスペクトが多分に感じられて良かった。本当に良かった。