謎解きはディナーのあとで(著:東川篤哉)

一行感想: 「思ったよりもライトノベル


謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

…別に批判的な意図はなく。
軽くサラっと読める作品でした。

ミステリーに詳しくはないのですが、いわゆる「安楽椅子探偵もの」って
これが定型なんでしょうか。
推理はあくまで会話の中だけで完結し、実際にその推理通りに証拠品が
発見されるかだとか、暴かれた真犯人がどんな反応をするかは物語の中で
触れられない。
正直、慣れない身としては「その先」まで気になったりしました。

それもあって、本作のコアは、物語の中心となる会話の主の「お嬢様」と「執事」
という設定と、そのユニークな掛け合いですね。一にも二にも。
実際に随所でこの点が強調されて紹介されていたし、それを知って興味をもった
一人ですが、自分も。

雑誌掲載作品ということで、物語も比較的定型にのっとった一話完結の謎解き。
追加された書き下ろしの章で変化をつけてくれるかと思ったら、案の定、
終盤の章では安楽椅子探偵の影山執事がお屋敷を飛び出して現場で活躍
してくれるという展開。
個人的にはこの終盤が一番おもしろかったかな。

明日からドラマが放送されるそうですね。
影山の外見はもっとシャープで神経質そうなイメージでしたが、原作が
あっさりしている分、ドラマはドラマとして独立したイメージを作って
くれることでしょう。

ちなみに、風祭警部のキャスティングを現時点で知りません。
年齢が違うけど真っ先に思いついたのは阿部寛でした。
まあ、それじゃほぼ「トリック」の立ち位置だけど。

そもそもドラマに居なくなってたりしないだろうな。

=引用=

「では、率直に思うところを述べさせていただきます」
そういって、深々と一礼した執事影山は、ソファに座った麗子に顔を近づけた。
そして彼なりの考えをスレートな言葉で伝えた。
「失礼ながらお嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様は
アホでいらっしゃいますか」

「そんなことも見抜けないようだから、お嬢様は『それでもプロの刑事か、
このド素人』などと侮辱され、不愉快な思いをするのでございます」
「あたしを侮辱して、不愉快にさせてんのは、あんただっつーの!」
「それはともかく」影山は麗子の叫びを完全無視して淡々と続けた。