THE QUIZ

啓文堂 第4回おすすめ文庫大賞受賞作品。

THE QUIZ(ザ・クイズ)

THE QUIZ(ザ・クイズ)

縁あって普段読まない怖い系。(五七五)
この話はネタバレで紹介しちゃいけない気がするので、ちゃんと配慮して記述します。

椙本さん、相変わらず人の殺しっぷりが容赦なさすぎです。
ちょっと語弊があるので正確さを期すると、「人が殺される姿の描写が容赦ない」。

ホラーが好きな人というのは、こういうバリエーション豊かな死体・死にざまの
描写にも一種のカタルシスを憶えるんだろうなと、他人事のように思ってみる。

他作品でも、このあたりはこの作家さんの得意芸の一つみたいですね。
ただし当方はそれに対してドキドキワクワクできる嗜好を持ち合わせないものだから、
割とざっくり情報を把握したら読み飛ばしてしまっており、筆者の工夫もあまり意味を
なしていないかもしれない。

むしろ個人的に注目したいのは、心理戦やミステリーの側面。
物語が進むにつれて見えてくる、登場人物達の(お互いも知らなかった)意外な素顔が
明かされて、随所であっと言わされます。
(正直、リアルな展開もあればフィクション感が出ている部分もありますが)

そして、結末をどう受け止めるかについては、読む人によって非常に意見が分かれる
かと思います。
それはそのまま、小説自体に対する評価になるかもしれない。
物語の最後に呈される薄ら寒さをどう捉えるか。

エピローグに登場する「彼」が、「例の事実」を知らないままという点も正直微妙だけれど、
全体的に、最後に明かされる真相に対して「だからってそれでいいことにはならないでしょう」
「死んだ人達はどうなるの」という疑問はあくまで残る。

ただし、その疑問自体を、筆者からの「QUIZ」と捉えると、なかなか奥が深いです。

この結末を「大団円」と呼べるか。
彼はこの先をどう歩むのか。
生命とは何か
正義とは何か
彼等の行いの、何が間違いで、何が正しかったのか。

…そして、こういう「問いかけ」に終わる結末が、アリかナシかについても。


基本的に怖い話が多いけど(怖くない話は未読)、この人の書く主人公は意外と
スタンダードなヒーロー像だなと思う。
設定が猟奇的だったり、殺人鬼が出てきたり、そちらの面で「狂った」要素を含むから、
このくらいでバランスが取れるのだろうか。
一方で「最後まで徹底的に悪い奴」が存在することも、一つの特徴かもしれない。


=引用=

『私たちはなぜ生まれ、なぜ死んでゆくのか。何を為すための、何者なのか。
私たちは存在からして疑問を持つ。私たちこそクイズそのものなのです。』

笠間の脳がゆっくりと目覚め始める。絶望から這い上がる唯一の術。それもまた
クイズだった。なぜ、こんなクイズが行われているのか? 疑問を持つということ。
難問に立ち向かうということ。それこそが、人類が人類たり得る最大にして最高の
能力だと藤尾は最初に言っていた。

このままでは、死ねない。