スノーホワイト

"―――女子力" ←え?

飛行機の、座席備え付けの小さな画面で映画を見る機会は何度かあったのだけど、
それとこれとは別だったようで、「劇場で映画が観たい」という欲求にかられ行ってきました。

本作は、予告を見た時点で「これは観にいくことになるだろうな」と思った映画。
観たいというか、「観ずにいられない」的な系統。

お伽噺は好きです。
そしてこういう、少しダークにヒネった童話というのは個人的に一種のツボ。
ブラザーズグリムもアリスインワンダーランドも、赤ずきんも見ております。

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そもそも、本家のグリム童話も二面性のあるものだしね。

感想。
総じて言えば、原案が原案だけにストーリーは割と単純であるものの、見ごたえは
あってトータルでは満足でした。

アリス・イン・ワンダーランド」と同じスタッフによる制作だそうで、映像的にも確かに
似通った部分があり(やや似過ぎという感も)、ヒロインが男並みの活躍を見せるのも共通。
現代風おとぎ話って、どうしてもこの要素が欠かせないんでしょうかね。

*   *   *

以下、ネタバレ及び今回はかなり茶化します。

主人公、白雪姫の見せ場は冒頭からかなりカッコ良さ満載。
「長年、塔の一室に幽閉された姫君」が、怒涛のハイパーアクションを決めての大脱走
海に飛び込み、鞍なしの裸馬を乗りこなす。

・・・この娘は、塔の中での数年間をいったい何やって過ごしてきたのだろうか。
(どうしても拭えなかった疑問)

幽閉される前の幼い頃の教育の賜物で、幽閉中も日々筋トレや自主錬(エアー)を
欠かさなかったとか・・・

まあ、考えちゃいけないんだけどね。
だって童話だもの(←伝家の宝刀)

そして逃げ込んだ森の中、追っ手の案内を強いられてやってきた“猟師”エリックに捕まると
「女王はあなたを裏切る、このままではきっと殺される」と煽り、内輪もめの戦闘が始まる
なりきびすを返してダッシュで逃走。
おお、なんだかすごい生存本能だぞ、この白雪姫。

その後、再びエリックとサシで鉢合わせると、今度は迷いなく流血沙汰を一発かまし、彼の
短刀を奪う。

・・・このあたりからもう、「そうか、こういう映画なんだ」と達観する。
神秘の力に味方されて云々というより、現代風味のたくましい女性なのね。
“類まれなる清らかな心の姫君ゆえに特別な力を持つ”という前提で話は進みますけどね・・・

そして改めてエリックから短刀の使い方を教わった時には「私にはできないわ」と怯んでみる
可憐なスノーホワイト
(いや待て、さっきから相当やる気あったやん)

導入部分から登場していた、姫君の生き別れの幼なじみのウィリアム君という人物が、彼女の無事を知って、
あえて追っ手の一味に仲間入りをして姫を見付けて保護しようと奔走するのですが、
白雪姫が本気で敵だと思って殺しちゃうんじゃないかと心配しました。
どうにか正体を伝えて間に合いましたけどね。馬上から落とされただけで。

そしてドワーフと出会ったり毒りんごを食べさせられたり、本家のエピソードも盛り込みつつストーリーは展開。
途中で姫君の癒しの力が見いだされる(一応そういう設定もあった)。
女王を恐れる人々を前に一席ぶって、スピーチは正直あんまり上手くないながらも、持って生まれたカリスマ性で
(もはや受け止め方も雑)、一気に民衆を鼓舞するというシーンもあり。
クライマックスは悪の女王との正面対決に至ります。
「女王は私が倒すわ」という姫君の雄々しき宣言も、もはや当然の流れに感じられる。

そして、甲冑に身を包み馬に乗って女王の城に攻め込む白雪姫。
(全身を覆う西洋鎧に身を包んで白馬にまたがるビジュアル、ここが激しくアリスとかぶる・・・)
サシで勝負つける気マンマンで、女王の待つ城の最上階を見上げた決意の眼差しは、
やや三白眼気味の風貌も相まって結構な迫力。というか殺し屋の目をしていたよ

女王=魔女も彼女を待ち受けていた風情で、いざラスボス戦なわけですが、ここで女王が
白雪姫も(戦いに導いたことで)味方に犠牲を強いている、と指摘します。
こういう展開も現代式というか、言っていることは正しいんですよね。
善悪二元論で進んでいく物語に、つかの間の視点の転換を与えたと思います。

動揺する白雪姫を言葉で追い詰める魔女。
「お前も私と同じ。他人を滅ぼし犠牲にする女」
「私は違うわ!」
嘘つけ。
いや失礼。

そこはあまり弁解の余地がない気がしましたけどね。
まあ、さすがに「何が悪いのよ」まで言っちゃったら物語が成立しないよね。
あくまで「民衆の平和な暮らしのため」という大義はありますからね、うん。

なおも続く一騎打ちの中、剣で斬りかかられても体さばきだけでかわす魔女の姿に
「これは普通の方法では勝てない設定なのか」と思い始める。
そもそも前半のシーンで女王はの不死身的な演出があったし。
最後は男性的な武力ではなく、清き姫君ならではの慈悲や癒しの力で魔女の邪悪に打ち勝つとか、
そういう展開?

ちょっと横道なことを考えていた間に、剣を取り落とし、魔女に押さえ込まれて絶体絶命の白雪姫。
普通に相手の脇腹に短刀ぶっ刺して勝利。

・・・( ゚д゚)
結局?

一応、彼女自身の流した血が魔女の復活の力を封じるみたいな、そういう理屈はあったみたいですけども。
まさかのクライマックスもバトルに終始して、ある意味予想を裏切ってくれました。

さんざん色々言っていますが、冒頭で申し上げた通り個人的には「満足」な内容でした。

ツッコミ所としての面白さだけでかなり語れたので、その他の雑感は次に回します。