1年半のあと
ようやく、訪れるに至った。
この土地。
古い住宅の並ぶ、あるいは「並んでいた」、海辺の街。
漁港を目にした瞬間におぼえた違和感は、私がこことよく似た景色の中で育ったからだろうか。
―――海面が高い。
海には、池や川と違って、一時的な予想外の増水なんて起こらない。
満潮時であっても、この高さまで水が来るのはおかしい。
というか、因果関係でいえば逆の話。
こんなギリギリの高さには、人は港を作らない。
そして到着の翌日に知ったこと。
あの大地震がもたらしたのは津波だけでなく、この一帯の1mほどの地盤沈下。
揺れによる倒壊だけでなく
津波による破壊だでなく
そんな痕も、戻しようのない変化も、起こっていたということ。
TVで、インターネットで、様々な形で目にし耳にし、想像を巡らせていた
はずなのに。
どうして人間は、私は、実際に目の当たりにしなければ感じ取ることが
できなかったんだろうと。
それがとても歯がゆくもあり。
同時に、せめてここに来た意味をちゃんと持ちたいと、改めた思った。