そして誰もいなくなった(過去の読書体験について)

先日スペシャルドラマが放送されましたね。
この原作で日本初のドラマ化というのがむしろ意外。

原作、中学生くらいの時に図書館で借りて読んだ記憶があります。
例の歌が「10人の小さなインディアン」という記載だった時代。今は原作も「兵隊さん」になってるの?

一度借りたきりの本、概要は記憶に残っていたものの、細部についてはドラマを観てもどこまでが原作通りかトンと思い出せないレベルで抜け落ちてました。

ドラマおよび、後からネットで調べた原作の内容から、自分の記憶が実際の内容と一致していたのは以下でした。
〇大枠のあらすじ(マザーグースの歌に沿った形で1人ひとりが殺されて最終的に全滅)
〇最後の被害者は家庭教師のヴェラで、一旦は生き残るものの、(犯人に仕組まれて)最後に自ら首を吊る。
〇ヴェラの過去の罪は教え子の水死

ドラマを観ながら思い出したのは
△真犯人が判事
△真犯人は一度殺されたように装うことで容疑者から外れて身を潜める

そして完全に忘れていたのはこのあたり。
×ヴェラ・ローレンス・ロンバート(辛うじて)以外の登場人物の職業やキャラクター設定
×全登場人物の名前(苦笑。ヴェラはどうにか思い出せたかな…)
×ヴェラ以外の登場人物の過去の罪
×ヴェラの教え子の事故の真相
×エピローグ(手紙の存在、判事の真の動機)

特にヴェラについては善良なヒロインという印象で、ドラマの後半を観る前にネットで原作の結末を確認して驚愕でした。

教え子を死なせた事実までは記憶にあったけど、「不注意」もしくは「ちょっと頭にきてしばらく放置した結果」とかそういうのだと思っていて。
年月を経た中で、ヴェラについては「過去の事故の罪の意識に苛まれ続けているヒロイン」、そしてローレンス判事の行為は「長年の法律家人生の中で『法で裁かれない加害者』への義憤が募った末の暴走」だとばかり記憶していて、両者のエグい側面はすっぽり抜けていました。判事もあんなにやばい人だったっけ。

ミステリー要素だけでなくて、人間の裏表とか心の闇みたいなものもしっかり描いた作品だったんですね。
たぶん今だったらむしろそういう「人間を描いた」部分に興味を持つんだろうけど、当時は深くは理解できなかったというか、ある意味許容範囲を超える内容でスルーしちゃったんだろうな。

登場人物の背景の設定や複雑な心情なんかも、おそらくあまり読み込めなかったから記憶に残らなかったんでしょう。
内容を把握してストーリーを追えても、十分にその本を読めたかどうかは別の話ですね。

妙にはっきり覚えているのは、最後に生き残ったヴェラが、同じくひとつだけ残った人形を持って「私たちは勝ったのよ・・・」と話しかけながら1人で歩いていくシーン。その先には彼女を誘うロープの輪が…
原作はその後見つけられていないので、確認はできてないのですが、ここは自分の中に映像でイメージが残っていて、おそらくセリフを含め記憶していると思います。
(合ってるよね?)

ヴェラだけは当時でもどうにか理解できて感情移入できる人物で(えぐい面はスルーしたものの)、きっとこのシーンの描写が印象的で、そして生き残ってほしくてハラハラして読み進めたんだろうな。

思わぬきっかけで、自分の昔の読書体験と向き合う(そして意外と記憶が適当であったことを悟る)機会になりました。